こんにちは。くすのき鍼灸院 渡邉です。
今回は、
第40回現代医療鍼灸臨床研究会の特別講演
「時間医学(体内時計)の臨床への応用」(東京女子医科大学名誉教授 大塚邦明先生)
についての第三回目になります。
時間医学 その③ …こころの時計
皆さんは子供のころより今の方が時間が経つのが早く感じませんか?
子供のころは気の済むまで遊んだころ、夕焼けになったような記憶があります。
今は午前中はもちろん、夕方になるのがあっという間。
一日、一週間、一ヶ月… 一年さえあっという間の感があります。
これは「実際の時間」と「こころの時間」に違いがあるからです。
大塚先生はこんなことをおっしゃっていました。
・10歳の一年は人生の10分の1の時間
・70歳の一年は人生の70分の1の時間
「こころの時計」に影響を与える要因は、様々な実験研究から分かってきている様です。
代謝
代謝が良いほど、心の時計が早く進み、時間を長く感じる。年とともに時間の経過を早く感じるのは、代謝が落ちるから、とも説明できる。
感情
恐怖を伴う時間は長く感じるらしい。
時間に注意を向ける頻度
頻繁に時計を気にすると、長く感じる。つまらない時間は、時間に注意が向きやすいので長く、逆に何かに集中すると短い。
印象に残る出来事の数
印象に残る出来事が多い時間の方が、長く感じられる傾向がある。
刺激
大きい物・音に接するなど、強い刺激を受けた時間の方が長く感じる。
これらは仮説や研究段階のものが多いようですが、納得できるような気がします。
ではこの 「こころの時計」 はどこにあるのでしょう?
大脳の「島皮質」にあります。
島皮質(とうひしつ、英: insular cortex)は大脳皮質の一領域。
脳葉のひとつとして島葉と呼ばれたり、脳回の一つとして島回と呼ばれたり、単に島とも呼ばれています。
島皮質は機能的に前部と後部に分かれており、
島皮質前部は嗅覚、味覚、内臓自律系、及び辺縁系の機能により強く関わり、
島皮質後部は聴覚、体性 感覚、骨格運動とより強く関わっています。
Wikipediaより
また、島皮質は痛みの体験や喜怒哀楽や不快感、恐怖などの基礎的な感情の体験に重要な役割を持つことが示されています。
つまり 「島皮質は感情や自己認識に強く関与している」 ことになり、
感情・自己認識 = 「こころ」と考えてよいと思うので、
島皮質で 「こころの時計」 が形成されていると言える様です。
本来の島皮質の能力は、危機に直面した時に逃げるか戦うかを瞬時に判断するものであったようです。
しかし人間はこの能力を進化させ、怒りや悲しみ、思いやりまで感じるようになり、操れるようになった。
こころの時計を身につけたおかげで、今日まで発展出来たともいえ、人間にとってとても重要な能力だと言えます。
認知機能についてのお話もありました。
「こころの時計」 はいろいろな面を持ち合わせているとの事ですが、日常行動から複雑な精神活動まで、ほとんどの高次脳機能の活動に、時間認知の関与が推察されているそうです。
そこで、3年後の認知機能を予測する要因として、10秒の時間予測が、統計上有意を示す要因として抽出されたそうです。
簡単に言うと、今後(3年後)の認知機能の程度を知りたいと思っている方に、10秒数えてもらい、どれほど正確な10秒と離れているかを調べます。
離れれば離れるほど3年後の認知機能の低下が予測できると言うことです。
逆に、10秒の時間予測を訓練することにより、認知機能を改善させることが出来るとの事でした。
とても興味深いお話でした。